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「風の中の牝鶏」 [映画]

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〔1948年/日本〕


田中絹代は夫・佐野周二の復員を待ちながら、
幼い息子を懸命に育てる健気な女。
ミシンの仕事をしてはいるが、生活は苦しく、
今日、最後の着物を売りに親友・三宅邦子の家に行く。


ところがその帰り、息子が大腸カタルになり入院してしまう。
金は先払いだと言われた田中は途方に暮れ、
以前から、「体を売れば金になるのに」と言っていた、
三宅と同じアパートに住む女に頼み、
たった一度、いかがわしい待合で見知らぬ男と関係してしまう。


ところが20日ほど経ったある日、
突然佐野が帰ってくる。
再会を喜び合った夫婦だったが、
息子の病気の事を話すうちに、
田中は佐野に、体を売った事を話してしまう。


以来、人が変わってしまったように落ち込み、
苦しむ佐野。
彼は田中が行ったという待合に自分も行ってみる。
そして、誰か女を斡旋してくれと頼み、
21歳だという若い女がやって来る。


夫婦は元に戻れるのか・・・。





小津安二郎監督映画。
84分の小作品ではあるが、
内容は重い。


時代のせいもあるだろうが、
女の浮気(これは断じて浮気ではないと思うが)は、
男の浮気より、
数倍、シャレにならない感が強い。


佐野周二は苦しみ抜く。
聞きたくないのに、聞かずにいられず、
田中に詰め寄る。


「斡旋した女とはどこで知り合ったんだ」
「どこでそんな事をしたのか」
「どの道を歩いたんだ、右か左か」
「なんという待合か」
などなど、しつこいくらい田中に尋ねる。


以下は私の考えだけれど、
これはやっぱり田中絹代が、
正直すぎた事に問題があるんじゃないのかなぁ。


そんな事を打ち明ければ、
佐野が苦しむのは分かりきっている。
体を売るなんて、
本来、絶対してはいけない事だが、
息子を救う為のやむにやまれぬ、
どうしようもなかった行為ではないか。


それを夫に黙っている事は、
騙すのとは全然違う。
無駄に相手を苦しめる必要は全くないと私は思う。


この作品とは全然関係ないが、
映画「ボーイズ・オン・ザ・サイド」の中に、
「大事な事を隠しているのは、
 嘘ではなく、『罪深き省略』」というセリフがあった。
そうだ、この場合、罪深き省略を押し通せば良かったのだ。


田中絹代が待合に行った時、
小津監督の主人公を思う気持ちがそうさせたのか、
賛否が分かれるようなセリフがあった。
私は、「それは詰めが甘いんじゃないのか」と思ったな。
あのセリフが観る者の頭の中に最後までついて回り、
私にはとても邪魔に思えたよ。


評価 ★★★☆☆

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