「江戸川乱歩の陰獣」 [映画]
〔1977年/日本〕
人気探偵作家、寒川光一郎(あおい輝彦)は、
数年前から台頭してきた、やはり探偵作家の大江春泥を、
「あれは探偵小説ではなく、怪奇小説だ」と、
マスコミにこき下ろしてきた。
そんな寒川が、美しい人妻、小山田静子(香山美子)と出会う。
静子は寒川の小説の熱烈な支持者で、
彼に相談があるという。
その相談というのが、
大江春泥と自分は、昔、懇意にしていた時期があり、
しかし、自分は春泥を捨て、遠くに移住した。
その後、現在の夫、小山田六郎(大友柳太朗)と知り合い、
春泥との過去を隠して結婚したが、
最近、春泥に居場所を突き止められ、
脅迫状が届いた、と言うのである。
脅迫状には、普段の静子の様子から、
夫婦の閨房の様子までが、あからさまに書かれており、
春泥がどこかから静子を見張っているのは明らかだった。
静子の怯えきった様子に驚いた寒川が、
小山田家の屋敷の天井裏を探索すると、
ボタンを一つ発見する。
そこに何者かが潜んでいた事は間違いなく、
さらには、春泥の予告通り、小山田六郎が殺害され、
事件は大きくなってゆく・・・。
先日は、バーベット・シュローダー監督の
フランス版「陰獣」を観たわけだが、
やはりここは、本家本元、
日本の「陰獣」を観なくては話にならぬと、
早速借りてきた。
しかし、平凡な出来だと思う。
文庫本にして120ページほどの内容を、
たっぷり120分かけて描こうというのだから、
原作にはない、どうでもいい登場人物が多く、
無駄な場面も多い。
話を無理矢理膨らませている感が否めない。
これなら、あの世界を90分で描いたフランス版の方が、
よほどスッキリしているよ。
そもそも、なぜ寒川役にあおい輝彦?
丸顔のもっさりした彼に、
病的で陰湿な「陰獣」の物語は合わないではないか。
ただ、他の出演者たちの顔ぶれが凄い。
倍賞美津子、加賀まりこ、仲谷昇、野際陽子、中山仁、川津祐介、
藤岡琢也、菅井きん、尾藤イサオなどが、
ほんのチョイ役で出演している。
そういう意味では、とても豪華な映画だと言える。
評価 ★★★☆☆
2011-06-12 12:00
nice!(8)
コメント(2)
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バーベット・シュローダー監督のは渋谷で観ました。 乱歩世界を良く出されていたが、欲言えば、玉緒をもう少しいじって欲しいかったし、全体にエログロ不足気味だよな。自分が原作への思い入れが深すぎたからかも・・
源利華の芸者顔がナンカイマイチだし。 少し酒でも入れてから観たらなら
ば、もすこし酔えたかな・・? (ーー;)
by 坊や (2011-06-13 14:03)
坊やさん
あの映画を劇場で観ましたか。
ちょっと羨ましい(笑)。
>エログロ不足気味
確かに、フランス人を主人公にしてしまった事で、
エログロというより、
おフランスの香り高い作品になってしまったのかも
しれませんね。
オチも原作とは全然違うし(笑)。
フランスの方は、なぜ今になって
乱歩を映画化しようと思ったのでしょうね。
by 青山実花 (2011-06-14 11:56)