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「阪急電車 片道15分の奇跡」 [映画]

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〔2011年/日本〕  


始まって5秒で心を掴まれた。
そういう映画も時々はあるけれど、
テンションが段々落ちてくる場合も多い。
しかし本作は、最後までそれが持続する。
満足感で胸が一杯。


婚約者に浮気され、相手の女が妊娠、
別れざるをえなかった中谷美紀。
彼女はある復讐を企て、それを実行する。


憧れのイケメン、小柳友と付き合う事になったはいいが、
次第に彼の暴力に悩み始める戸田恵梨香。


孫、芦田愛菜を預かり、面倒をみる宮本信子。
二人はよく阪急電車に乗り、お出掛けする。
宮本は、息子夫婦とはしっくりいっていないらしいが、
一本筋の通ったお婆ちゃんで、
過去の思い出も楽しそう。


軍事オタクで、パンク野郎で、大学で浮いてしまっている勝地涼。


勝地と同じ大学に通う、
他のオシャレな女子大生に今一つ馴染めない、谷村美月。


勝地と谷村が通う関西学院大学への入学を目指してはいるが、
あと一歩成績が振るわず、教師の一言に傷つく、有村架純。
しかし有村には社会人の恋人、玉山鉄二がおり、
玉山はそんな彼女をとても大切にしてくれている。


PTA仲間の主婦たちとのランチが苦痛でたまらないが、
誘われるがままに、ズルズルと付き合ってしまう南果歩。


私立の小学校に通いながらも、イジメに悩む高須瑠香。





この8人が織り成す人間模様。
誰かが誰かと、少しずつ関わって、
苦しい事もあるけれど、
最後は全員が、必ず納得できるオチになっているという、
大変に上手くできた、
それでいて、わざとらしさのない、素晴らしい展開。


全てが大団円のハッピーエンドではない。
例えば中谷美紀にしても、
復讐した後の彼女は、
どこか後味が悪く、めちゃくちゃ爽快というわけではないのが、
私にも伝わってくるし、
でも、新しい一歩を踏み出す為に、
あれは必要な儀式だったのだと、
たぶん観客の誰もが思うだろう。
そして、彼女の復讐に気付いた宮本の、
彼女に掛けてくれた言葉がまた、胸を打つ。


作りも上手いのよ。
“往路”で、登場人物たちの悩みを綴り、
“復路”で、それが解決するようになっていて、
その過程の一つ一つに、じわじわと涙がにじむ。


出演者の殆どが関西出身だそうで、
彼らが話す関西弁が耳に心地良い。
それから、大杉漣、相武紗季、安めぐみなどが、
ほんのチョイ役で出ているのが、とても贅沢。


正直、全く観るつもりのなかった映画で、
でも、どこのサイトを見ても、
殆どの皆さんが手放しで褒めており、
「そんなに良いのか!?」と食指が動いた。
悪くはないだろうと思ってはいたが、
これほどとは。
これを書いている今も、涙が出そう。
この映画に出会えて本当に良かった。


評価 ★★★★★

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コメント 8

とみっち

僕は関西なので阪急電車はたまに使いますよ^^
まだ予告やチラシでしか観てないんですが
優しい気持ちになれるようなステキな映画ですよね。
このレビューを読んで僕も見に行きたくなりました♪
by とみっち (2011-05-12 16:48) 

yonta*

すごい!青山さん、★5つですかー。
脚本が岡田惠和ですよね。実は今、岡田さんのドラマをDVDで観返してます。
とても素敵な作品だったのですね。私もこの映画に出会いたくなっちゃいました。
by yonta* (2011-05-12 22:08) 

青山実花

とみっちさん

あんな可愛い電車を利用されているなんて、
なんだか羨ましいです。
知っている景色が出てくるなんて、
私より何倍も楽しめそうですね。

実は、映画が終わり、早々に席を立ったお爺さんが、
傘を忘れて戻ってきたのですが、
キョロキョロして探している様子に、
「ここにありますよ」と声を掛けてしまいました(笑)。
すっかり優しい気持ちになってしまったようです(笑)。
by 青山実花 (2011-05-13 23:14) 

青山実花

yonta*さん

この映画と「ブラック・スワン」をハシゴしたのですが、
両方とも5点で、帰りは足取りも軽かったです(笑)。
ちなみに、ハシゴした映画が両方とも5点だったのは、
一番近くて、2005年の、
「武士の一分」&「プラダを着た悪魔」の組み合わせです。
6年ぶりだなんて、
意外と有りそうで無い事なんですね。
yonta*さんもいつか、この映画と出会って下さいね。

それから、もし差し支えなかったら、
今、yonta*さんが観られている、岡田惠和のドラマのタイトルを
教えていただけないでしょうか。
私はどうにもドラマ部門には弱くて(笑)。
ドラマに関しては、まだ昭和にいるような感じなんです(笑)。


by 青山実花 (2011-05-13 23:26) 

yonta*

それは素敵な日でしたね。
2本観て、両方5点なんて滅多にあることじゃないと思いますよ。
最近のハシゴ、「シザーハンズ」と「グリーンカード」です、確か。
調べたら、なんとちょうど20年前!当時生まれた子が大人だ!
残念ながら、両方5点ではなかったです(笑)。
すごい余談で失礼しました・・

岡田ドラマは、「アルジャーノンに花束を」を観返しています。
原作が好きな方には怒られてしまうかもしれませんが、私はこちらの方が好きで・・
でも2002年のドラマみたいで、新しくないのですが。
この方の脚本は、ちょっと不思議なくらい、はまる時と、
そうでない時の差が激しくて・・(笑)ドラマはすごく書いてますよね。
by yonta* (2011-05-14 23:51) 

coco030705

こんばんは。
いい映画でしたね。震災で疲れ気味の私の心にぴったりでした。
原作も読んでいますが、映画の中のセリフは原作からのものが
たくさんあります。
よくできた作品だと思います。登場人物がちょっとずつ関係がある
というのも、おもしろいですね。
by coco030705 (2011-05-15 22:01) 

青山実花

yonta*さん

「シザーハンズ」と「グリーンカード」の組み合わせも素敵ですね。
どちらも大好きですよ。
20年前なんて、
今の私からしたら、昨日みたいなものです(笑)。

岡田惠和の作品をウィキペディアで調べたのですが、
見事なまでに、一つも観た事がありませんでした(笑)。
「アルジャーノンに花束を」は、
ユースケ・サンタマリアのドラマなんですね。
レンタルされているのであれば、
今度観てみたいと思います。
by 青山実花 (2011-05-16 13:10) 

青山実花

coco030705さん

本当に、「良くできた」というのが
ピッタリの映画だと思います。
どのエピソードも、完全解決ではないけれど、
それでも頑張ってやっていこうよって
声が聞こえるようでした。
勝地涼と谷村美月のお話も大好き!

coco030705さんは原作も読まれているんですね♪
羨ましい。
私も早く読みたいです。
by 青山実花 (2011-05-16 13:35) 

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