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「幸福」 [映画]

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〔1981/日本〕 


書店で3人の客が射殺される。
警察による犯人探しが始まるが、
被害者の一人、中原理恵は、刑事の一人、永島敏行の恋人で、
永島は自分のせいで彼女が撃たれたのかとショックを受ける。


主演の水谷豊の家庭も哀しい。
妻に逃げられ、彼は子供と二人で懸命に暮らしている。
狭い家の中に洗濯物がぶら下がり、その下で遊ぶ子供たち。
母親が出ていったその家庭は、息が詰まりそうな閉塞感を感じる。
なんとか母親に帰ってきてもらいと願わずにはいられない。


捜査をしていくうちに、
中原がボランティアをしていた家庭を訪ねて行く事になるのだが、
その家庭も強烈だ。
市原悦子と、彼女の息子と娘がいるのだけれど、
なんと、息子と娘は兄妹で睦みあい、
妹は兄の子を妊娠しているのだ。
それでも、そんな息子を「跡取り」などと呼び、
頼ろうとする市原の態度にも絶句する。


中原の生い立ちも決して幸せではなく、
母親が子供の頃に出ていっている。
そこに、妻に出ていかれた水谷の人生が重なる。





犯人探しよりも、そこに行き着くまでに浮かび上がる人間模様が
大変に興味深い。
絵に描いたような幸せな家庭なんて、本当は数少ないのかも、
と、こういった映画を観るといつも思い知らされる。


エド・マクベインの小説を市川崑監督が映画化。
水谷豊がまだ若く、
同じ刑事役とはいえ、「相棒」とは全く違った風情がある。
非常に面白く、
最後まで夢中になって観てしまう。


評価 ★★★★☆

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コメント 4

k_iga

87分署シリーズはほとんど読んでいて、原作の「クレアが死んでいる」は
メインキャラクターのひとりであるクリング刑事が恋人の死に直面し、明る
いキャラだったのが今作以降、性格が変わってしまったという印象しかあ
りません。

それ以外のストーリーは忘れてしまって映画独自なのかなぁ?


by k_iga (2011-03-02 21:35) 

青山実花

k_igaさん

シリーズを殆ど読まれているなんて凄いですね!


私は大昔、数冊読んだだけで、
内容は全く覚えておらず、
ストーリーが映画でどこまで再現されているのかさえ
分からずに(笑)。
今度読んでみます。
by 青山実花 (2011-03-04 11:55) 

k_iga

「クレアが死んでいる」って、こんな話だったっけ?と腑に落ちないので
「幸福」DVDを観て、原作も読み返しました。 大筋は同じですが。

娘の子の父は市原悦子一家のアパートの2階の夫婦の男。
なんで兄弟で、みたいな設定にしたのか??
娘が子どもの父親を明らかにしないのは暴行されたから、というのでは
説得力に欠けると変えたんですかね?

映画オリジナルの、レストランで食事後に母親が出ていったので
子どもたちが父親の「たまにはレストランで食事を」に怯えて
反対するシーンは泣けました。

by k_iga (2011-03-09 07:15) 

青山実花

k_igaさん

さすが、早いですね!
そうなんですか。
本当に、なぜ兄妹の関係にしたのでしょうね。
より禁忌な雰囲気を出したかったのか。
それとも、「家族」が抱える問題みたいなものを
強調するためなのでしょうか。


全体的に、家族の物悲しさが描かれていましたよね。
どんな家庭に生まれようとも、
それを運命と受け入れて、
その中でベストを尽くすしかないのでしょうが。
by 青山実花 (2011-03-10 14:11) 

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